安全第一 KSPヘルメット姿の鈴木一永氏
妥協しない
丹念な仕事を目指す
株式会社ケーエスプランニング
鈴木一永
●電気設計から鉄骨設計へ
もともと電気設計方面の会社へ就職したが、新規事業立ち上げにより、まったく異なる分野の仕事につくことになった。そんな折に、鉄骨の図面を描く会社の手伝いをしてくれないかという誘いがあった。図面を描く仕事したいと思い、鉄骨施工図などを描く会社へ転職した。就職したときは、建築の素人だった。
最初に、一級建築士の先輩のもとで図面の書き方を叩き込まれた。ものすごく厳しい先輩だった。おかげで、10年かかるところを3年で図面を描く技術を身に付けることができた。鉄骨造を加工する工場が隣接していることで、先輩が毎朝一緒に工場内をまわりながら、実物を通して教えてくれたことが大きかった。
初めて仕事を任されたのは、工場内の小さな建物の増築だった。自分一人で全て担当して現場建て方まで行い、なぜか感動を覚えた。
●徹夜続きの独立開業時代
4年間修業し28歳の時に独立した。両親の体調が悪くなり在宅で働きたかったからである。独立後は、鉄骨の工作図を描く仕事を受注した。自分で仕事をやりだして気づいたのは、鉄骨加工しやすいように、分かりやすい図面をしっかり描くということは、手間暇かかるのである。分かりやすい図面を描きたいが、描きすぎると時間がかかる。図面料と作図手間代のバランスをとることに苦労した。発注者は、工場をあけないように図面を急いで仕上げてほしいという要望が多く、徹夜続きの日々だった。
●設計施工の強みに気づく
鉄骨工作図を描き続けているうちに気づいたことがあった。鉄骨は関連する工事が多く、全ての下地となる。だから、自分で建物をすべて建てられる図面が描けるのではないかということだ。そんな折、仕事を紹介してくれる人との出会いがあった。試しに、自分で図面を描いて、見積し、提案し、採用され、工事することができた。自分で設計施工できる強みがあることに気づいた。
その後も、建物の計画があるときに、工事費見積と図面をセットで施主へ提案できることが喜ばれた。当時は、見積に提案図面を添付する会社が他にはなかったこともある。
●お客さんの立場に立つ
仕事は、人付き合いから始まる。知人の相談に乗り、図面をつくり進める。センスとアイデアでコストを切り詰め、見栄えよくを目指し提案している。手間暇かかる仕事を率先して、取り組んでいる。手間暇かかる物件は、敷地条件が厳しかったり、仕上で隠れてしまい見えなかったり分かりにくい部分のつくり込みが大事なことが大半である。だから手抜きしても分かりにくい部分である。しかし、手抜きはしたくない。建物は、工事後も何かと付き合っていかなければならないものだから、手間をかけ、丹念な仕事をすることを目指している。それは、自分自身がお客さんの気持ちになって仕事に取り組んでいるからである。自分は妥協できない性格ということもある。
その人のために仕事を頑張れば、仕事がめぐる。自分の利益ばかり追うと悪循環に陥るものである。