茶室設計のため茶道稽古中の北瀬幹哉氏
地域に根ざす
設計・デザインを求めて
環デザイン舎
北瀬幹哉
●地域に根差す建築家
大学の恩師は、有田のまちづくりに取り組んだ建築家。建築の設計を学んでいるときに、デザインのより所はどこにあるのかと悩んでいた。そんな時に、有田の人々が大切にしていることを読み解き、まちづくりプランや建築設計へ反映させる手法があること。地域らしいこだわりの仕事に取り組む人がいることを知り、建築に取り組む姿勢が決まった。
東京の建築設計事務所勤務時代は、奈良県や東京都等で小学校、長野県では特別養護老人ホーム等の設計と建設に携わった。
仕事を通して実感したのは、地域のことを調べ、話をたくさん聞きながら設計を進め、地元の人と一緒につくることが、より良いモノづくりへつながることだった。より一層、地域に根差して仕事がしたいと感じるようになった。
●Iターン起業からの発見
料理が趣味。旨い食材求め、自分で野菜をつくりたいと夢見ていた。そんな折、妻がいわき市へ家業を継ぐために戻りたいとなった。東京で地域の仕事をするより、地域に住み仕事をした方が、より地域のことがわかる仕事ができると考え、2008年にいわき市へ移住と起業を決断した。
移住は正解で、住んでみてわかることが沢山あった。魅力的な地域資源が豊富なこと。しかし、住んでいると当たり前すぎて、PRされにくいことも分かった。
趣味で野菜を育て、農家と知り合い、農産物の魅力PRと農業体験施設設計の機会に恵まれた。その矢先に東日本大震災が発生し、計画中止になった。悔しかった。
●震災からの学び
農業関係者等とineいわき農商工連携の会を結成し、震災復興情報発信等の取り組みを行った。風評が立つ中考えたのは、今のいわきのことを「わかりやすく」伝えられるか。他地域の人と「つなげられる」かだった。住んでいるからこそ分かる、日常や魅力を丁寧に伝え続けることで共感を得られた。おかげで、生産者と消費者のつながりが広がっている。
仕事的にも、全国で木材活用をコーディネートする際、「わかるとつながる、地域」を意識した情報デザインにより、地域材活用した中大規模木造建築の実現につながっている。
●一緒に家づくり
いわき家ナビで「浜通りな家づくりのコツ!」コラム執筆中。住宅の設計や無料相談を行っていることから、家づくりの疑問に答え、家づくりで大切なことを紹介している。住まいの設計でも、いわきならではの特徴をていねいに読み解くことで、日照や木材を活かすこと、広い家屋を部分的にリノベーションするなどの手法を見いだしている。
住まいづくりに不安はつきもの。安心して住まいづくりを楽しんでもらえるように、打合せを綿密に行う。家族のライフスタイルを読み解き、好みを活かし、一緒に家づくりに取り組む姿勢で住まいを設計している。打合せ中は、きたせ農園の無農薬有機栽培野菜も楽しんでもらえる特典付きである。
魅力的な地域資源はたっぷりある。一緒にいいモノづくりができる人の出会いを大切に設計・デザインの日々である。