「鉄骨大好きです!」工場にて北瀬真紀氏

 

いわき四季の会 会報「人と仕事と士気と」 
 

技術者が育つ会社

間違いないものづくり

 

鈴機工業株式会社 
 
北瀬真紀 

●会社員からの決断

 「祖父が創業し、父が経営していた鉄骨屋を継ぐ気はありませんでした。」
 鋼構造製作を行う、鈴機工業の常務取締役、北瀬真紀さんは、東京の大学卒業後、建築設計事務所等で働いていた。勤め先で感じていたのは、自分はこの仕事を東京で続けてよいのかという不安と仕事の取り組み方に対する不満だった。
 建築の仕事に慣れてきたころ、実家の父から「大きな物件に取り組むことになった。仕事を手伝えないか?」と連絡があった。
 もっと自分で納得できる仕事がしたいことと自然の多い場所で犬を飼い、仕事と生活を充実させたいと考えていた時期と重なった。幸い、家族の賛同も得られ、Uターンすることになった。
 

●よそ者視点から見出す

 最初の仕事は、鉄骨造をつくる元となる鉄骨の施工図図面の作図だった。分からないことだらけで苦労した。図面を描くこと共に、工場の職人との打合せ、現場への鉄骨搬送や建て方管理、鉄骨や金属の組合活動、新規雇用募集と面接など、会社に必要な業務を約十年かけて経験してきた。実務が分かる女性技術者である。
 会社員の経験からよそ者の視点で、会社の取り組み方を俯瞰できたことが役に立った。
 鉄骨の建物は、構造的に安全で基準などに沿った、構造物を組み立てることが求められる。しかし、以前は、図面の食い違いや加工間違いなどがあり、間違いを修復することへの労力が大きいこと。背景には、様々なコミュニケーション不足という課題を見出すことができた。
 

●間違いないものづくり

 お客さんに喜ばれる仕事は、納期に間に合い、設計図に求められる内容に間違いのない鉄骨構造を組み上げることである。
 よい仕事をしていくために必要なことは、施工図面の精度を高めること。丁寧に図面を描くために、発注元や工場の職人などと綿密に打ち合わせることを大切にしている。鉄骨に関わる人たちとのコミュニケーション密度を高めることが間違いを減らすことにつながるのである。実務を通して、見出してきたものづくりの姿勢である。
 

●死ぬまで働きたい

 鈴機工業の職人の中には、下は十代、上は、七十代までいる。高齢の職人は、体力が落ちてきているので、若い職人ほどの作業スピードはない。しかし、ものづくりの世界では、技術は人を裏切らない。高齢の職人だからこその精度や技術がある。その技を若い職人が身近で見て学び次へ続く。
 高齢の職人は、自分から辞めたいとは言わない。体が動く限り仕事をしていたい人ばかりである。
 北瀬真紀さんは、会社勤めのころは、仕事を辞めたいことが多かった。しかし、自分で仕事を切り開き、高齢の職人の姿を見ていると、死ぬまで働きたいなと感じるようになった。
 

●技術者が育つ会社づくり

 最近では、働き続けるために、会社を続けられることが目標となっている。幸い、縁があり、若い人たちが就職し、技術を磨き資格を得ている。自分が、先輩から教わった技術を、若い人たちへ伝える立場になってきている。これからは、間違いないものづくりを目指し、技術者が育つ会社づくりを続けていきたい。

 

【鈴機工業株式会社】
福島県いわき市平塩字出口76-1
TEL.0246-23-3729
鉄骨職人募集中
http://suzukikougyou.co.jp