スピードと深化ある
鍛冶仕事
株式会社金成鉄工所
金成紀良
●小名浜らしさ
実家の家業は、もとから継ぐものだと考えていた。取引先の商社で修業後、22歳の時に今の会社へ入社した。自分で3代目である。 祖父の代に船関係の仕事を始め、鉄骨を取り扱っていた。昭和49年ごろ今の場所へ移転した。近くに工場がたくさんあったことで、工場のメンテナンス業務が主となった。工場内で修理する部品は、鉄骨とステンレスが主である。
工場の周りに、当社と同じような金属加工の会社が複数集まっているのは珍しい地域である。各工場がメンテナンス時期を調整することで、金属加工会社が随時メンテナンスし続けやすい体制ができているのが小名浜の特色である。
●鍛冶仕事
仕事は金属を加工する「鍛冶仕事」である。金属をガスで切断すると熱変形する。そこへ熱を入れることで元の形に戻す。また、溶接すると材料が縮むのでその分を見込んで材料を大きくしておく。しかし、手直しするほど、質が悪くなる。これらの変形等をどのように精度よくコントロールできるかが職人の技となる。
●品質とスピード
鍛冶仕事の仕上がりは、目で見てよければほぼ大丈夫。いい仕事は仕上がりがきれいである。仕事の「品質とスピード」はほぼイコールだと感じている。
仕事の品質を維持するために大切にしていることがある。手間をいかにかけるか。金属を組立加工する前の「下準備」が最も大切である。無駄をなくし、次の工程へ進めやすいよう、準備に手間をかけることである。従業員には、手間をかけるから給料をもらえているんだよと伝えている。
●自社の価値
自分が入社当初は、合理化が大事だという気運があり、たくさん仕事をこなすべきだという思いがあった。しかし、自社の価値とは何かを考えたときに、他社と同じような仕事の取り組み方ではだめだと感じた。
手間をかけ、品質の高い仕事を維持できなければ、今後立ち行かなくなるのではないかと考えた。どのような依頼の仕事でも金成鉄工所という仕事をしなければならないと考えている。
●深化と進化
ビジネス書などでは、常に事業規模の拡大などがうたわれるが、そうは考えていない。自社は、「深化と進化」を目指している。職人全体の技術や仕事の内容を充実させていきたい。仕事は、経験と積重ねでできるようになる。腕一本という世界でもある。
今は、10~70代の職人12名で仕事に取り組んでいる。若い社員が入社した。しっかり頑張っている。真面目に一生懸命頑張るとよいことを伝えている。小手先の仕事はすぐにわかる。鍛冶仕事の経験を積んでもらいたい。
●これから
仕事上では、即決、即断はしない。一晩寝かせてから物事を決めるほうが良いと感じている。常に自分の仕事の方向性や取り組み方を考えている。
鍛冶仕事の現場をぜひ見に来てほしい。金属加工の魅力、職人技に興味ある人材を求めている。