復元塗装を行い検査中の車と菊地貴志氏

 

いわき四季の会 会報「人と仕事と士気と」 
 

色の違いを見極める
カーペインター

 

㈱ 菊地自動車塗装 
 
菊地貴志

●継ぐ気は50%だった

 会社は、1952年創業。製材所を営んでいた祖父が、他でやっていない商売をしようと考え、当時では珍しい自動車塗装の会社を始めた。祖父に塗装の技術は無く、水戸から職人を連れてきての創業だった。
 祖父の代は、業務車両全盛期で、各企業の指定色塗装も数多く行ってきた。
 父は、芸術家を志したこともあり、看板を作ったり、業務車両への文字書きなども行っていた。
 自分は、一人っ子だったので、会社を継ぐ気は半々ぐらいの思いだった。しかし、25歳の時に家業継承を決意した。入社後は、日々、先輩の仕事を見て技術を覚えていった。
 

●直したところがわからない

 自動車の修理は、病院みたいな側面がある。健全な車は来ないが、ぶつけたり、事故を起こした車が来る商売である。大小様々な傷へこみを元通りに直すことが求められる。だから、営業をかけにくいのが悩ましい。
 駐車場などに止まっている車をよく見ると、部分的に色が異なっていたり、手間をかけずに、直したことがわかるものがある。これは、鈑金作業が悪かったり、塗装がよくない仕事のためである。
 自分が直した車は、そんな仕上がりにはしたくない。直したところがわからないような仕上がりを目指している。
 

●下地づくりと色の復元力

 傷、へこみを直し再塗装する際には、下地づくりが大切である。修理する箇所に取り付いている部品を外し、下地を整え、塗料がはがれないよう足付けをし、マスキングをしてから塗装をする。
 損傷が大きい場合は、メーカーから該当パーツを取り寄せ交換することもある。車は、経年変化により、購入当初より色が変化していることがある。そのため、新しいパーツを、現車の色に合わせて、修理部分が目立たないよう、色の復元が必要になる。
 色は、光の当たり方、見る角度によって異なる。配合した塗料を塗る際も気温や湿度などで発色が異なる。これらを総合して、色を見極められる技を磨くのが、この仕事の醍醐味である。
 

●カーペインター技術継承

 仕事の営業は、直したところがわからないような復元修理による仕上がりに満足いただき、リピートや口コミいただけることだと感じている。
 これからは、車がぶつかりにくいシステムの開発により事故が減少することが考えられる。もちろん、事故は起こらないほうが良い。しかし、色を見極め復元できるカーペインターの仕事は機械ではできない。生活に車が不可欠なのと同様に、色を復元する技をとだえることなく継承していきたい。
 近年、若者の車離れが叫ばれているが、プロの技に興味を持って、車に関わる仕事をしてみたい!という若者を募集中である。
 色を見極め、色を復元する技の追及に終わりはない。日々、修行中である。

【株式会社 菊地自動車塗装】
いわき市平字菱川町2‐1
電話0246‐22‐3388
自動車の鈑金塗装承ります。